おいしいカフェラテには、おいしいコーヒー豆がかかせません。いいクルマには、いいタイヤをつけなければなりません(例えが分かりにくい・・・)。

■焙煎
 僕はフルシティロースト〜シティローストぐらいの焙煎具合がミルクとのマッチングがいいと思ってます。ローストが深いと、コーヒーの主張が強くてミルクが乳臭く感じる場合があります。やや浅めにローストすることで、エスプレッソの酸味と香りがミルクの甘さを上手に引き立ててくれます。

■ブレンド
 ブレンドについては、エスプレッソのセオリーは確立されていないと考えています。一種類のコーヒー豆でも、もともと複雑な味や香りを持っていますので、シングルでももちろん良いと思いますし、ブレンドで自分のイメージを探してみるのもいいと思います。注意しなければならないのは、コーヒー豆の評価には同一条件(焙煎の程度、焙煎してからの日数、抽出マシン・方法)を揃えないといけないことです。カッピングによる評価もありますが、エスプレッソとは抽出条件が随分かけ離れているので、エスプレッソにした場合のキャラクターを再現できているとは言い難いように思います。あくまでも参考程度とした方がよいかもしれません。

■エージング
 実は、コーヒー豆で僕がもっとも大切だと感じているのはエージング(焙煎後のおき時間)です。値段が半分の豆でも、適切なエージングの期間であれば、実はおいしかったりします。逆に、どんな高級な豆でどんな素晴らしい焙煎でも、数ヶ月も経った場合はおいしさは半減します。コーヒー豆の種類や焙煎にもよりますが、お店で使っていた豆は5日後がベストでした。もっとも、バリスタによって好みも変わるので、3日もしくは7日くらいが好きというバリスタもいました。他もお店では2週間目がベストとしているところもありました。
 時間が経つほどクレマの量や香りは減りますが、逆にクレマのキメは向上し、コクは増すことが多いようです。ただし、一ヶ月以上も経った豆は酸化が進んで、倉庫のようなすえた臭いがつくことが多いです。


 いろいろ書きましたが、おいしさは数字で表現できる現象ではなく、あくまでも個人の好みで判断することなので、ここは参考程度に思ってください。むしろ、自分はこれが好きだ!というローストやブレンド、エージングを見つけれれば、それが最高のコーヒー豆だと思います。
Latte Art
■準備
コーヒー豆
マシン
 業務用のマシンがスポーツカーとすると、家庭用のエスプレッソマシンは軽自動車くらいかもしれません。ただし、いいタイヤを履いて、腕の立つドライバーが乗れば、スポーツカーに負けないパフォーマンスを発揮することもできます。実際、一万円の家庭用マシンで、どーんと開いたロゼッタを提供していたお店がありました。もちろん、おいしかったです。ただ、オーダーがたくさん入ると、ボイラーが小さいので対応できなかったようですが・・・。

■家庭用マシン
 エスプレッソ用の豆を業務用のグラインダーで極細挽にすると、抽出圧力が高くなりすぎ、大きくマシンに負担がかかります。あるメーカーのマシンは買って3回目で壊れました。デバイスタイルはエスプレッソの抽出もスチームも良く、お薦めです。この他、エレクトロラックスやデロンギもよいようです。
 なお、ラテアートをするフォームドミルクを作るためには、よく市販品についているプラスティックの器具は取り外したほうがいいかもしれません。あの器具は空気量を調節するためのものですが、必要以上に空気が入るため、カプチーノのような軽いフォームになります。

■業務用
 業務用では特殊なマシンでない限り大丈夫です。もちろん、メーカーやチップの形状で大きなクセがあり、同じメーカーでもマシンごとにキャラクターがあります。同じマシンでもボイラーの水位などで大きく性格が変わります。
セミコマーシャルは十分な性能がありますが、連続抽出や安定性に課題があります。
 エスプレッソは、ドリップコーヒーと比べてとても細かくコーヒー豆を挽く必要があります。このため、家庭用のグラインダーでは対応できる機種が限られています(※デバイスタイルのグラインダーは素晴らしい出来です!)。よって、マシンは家庭用のものでもグラインダーは業務用という方が多いようです。もしくは家庭用のグラインダーを改造してクリアランスを小さくするなどの工夫をされている方もいます。お店で挽いてもらう方法もありますが、劣化がとても早いのですぐに使う必要があることや、マシンにメッシュを合わせることができないなどの問題もあります。
 そこで、家庭用グラインダーをお持ちの場合は、数回挽き直すことをお勧めします。一度挽いた粉をグラインダーのホッパーに再度投入して挽きなおすのですが、改造をしなくても細かいメッシュにすることができるので、クレマたっぷりのショットを落とすことができます。
グラインダー
 ピッチャーの形状はとても重要です。いろいろなピッチャーがありますので、自分に合ったものを探してみてください。僕はマキネスティさんやフレスコさんが販売しているピッチャーが好きですが、それぞれのピッチャーに得意不得意がありますので、いろいろ試して違いを楽しむのもお薦めです。
フォーミング時の温度はピッチャーに手を添えて測るので、肉厚は薄い方が温度の変化に敏感に反応するため、好ましいと思われます。
ピッチャー
 対流を用いるラテアートの場合は、カップの形状ができあがりに大きな影響を与えます。できるだけ半球に近い形状が理想です。アートそのものには関係しませんが、厚手の方が冷めにくく、カップのへりがすこし外側に開いているほうが飲み口がよいようです。取っ手は指が入るほうが持ちやすいと思います。
カップ
タンパー
 タンピング方法はいろいろ意見が分かれるところですが、ポルトフィルターとの隙間が小さくなるようにタンパーの径は選んでいました。隙間が大きいと圧力のムラも大きくなります。大事なのは、バスケット内のコーヒーが均一かつ水平になることなので、一番手になじんで、重心が下にあり、まっすぐ垂直に押せるものがよいかと思います。
 はじめに、豆をポルトフィルターに詰めます。指でレベリングする方法もありますが、直接コーヒーを指で触れることを嫌がるお客さんがいることや、凹凸ができる(詰めムラができる)ことを避けることは難しいので、ドサーの蓋をドーシングプレート代わりに利用していました。常に安定した量を確実にレベリングすることができ、コーヒー豆に手を触れる必要もないので重宝していました。詰める粉の量はダブルで17gです。エスプレッソのみを注文された場合は18gとしました。たった1gですが、大きく味が変わり、酸味が抑えられてコクと苦味がバランスするので、ショットで飲む場合に向きます。

 次にタンパースタンドでノックし、フィルターの中にコーヒーを均質に詰めます。粉ものを容器に詰める際にノックすることは一般的かと思いますが、不思議とコーヒー業界では少数派のようです。
 次にタンピングします。タンピング圧力は5kg程度と控えめです。タンピングの圧力やツイスト、ノックはマシンの仕様や好みの範囲なので、抽出状態が良いならば、一律にこうしなければならないということはありません。重要なのはメッシュと圧力のバランスだと思います。ただ、マシンによってはシャワーヘッドからの湯の勢いが強く、圧力を高くしなければ掘れてしまうこともあるようなので、諸条件を考慮する必要がありそうです。

 ただ、ツイストはコーヒーにせん断力を加えることになるので、風車状のクラックを作る可能性があります。土質力学では「ねじりせん断試験機」という試験方法まである比較的知られている現象なので、極端に荷重をかけながらツイストしたところ、やはりクラック状のせん断面が発生していました。これはお湯の通り道になり、好ましいことではありません。ただし、極端に荷重をかけた場合の例であり、マシン・豆・圧力によって条件は異なるのでかならずしも発生するとは限りません。特に、表面のポリッシングであればなんの問題もないと思います。
 タンピングはテーブルの端を使って行うことが主流のようです。タンピング圧が20kgを超えるようであれば、重心位置に近い分、荷重をかけやすいと思います。圧力をあまりかけない方法であれば、タンピングスタンドを使った方が安定があり、レベリングもしやすいかと思います。

 ノックはタンピング終了後におこなってはいけません。ノックによってクラックが発生するからです。同様に、タンピング終了のポルトフィルターを粉落としのために振る場合がありますが、クラックをつくることになるので避けるべきです。
 いろいろな銘柄がありますが、ミルクが甘ければいいというものでもありません。コーヒーとの相性なので、エスプレッソと合わせてみて検討していく必要があります。お店ではめいらくさんと小岩井さんの牛乳の評判がよかったです。
ミルク
■エスプレッソの抽出
 挽いた後のコーヒー豆の劣化はとても早く、1時間もおくと性状が大きく変わります。そのため、ドーサ内に挽きだめはせず、オーダーの度に挽いていました。メッシュは一日のうちで2度は調整が必要になりました。気温や湿度の関係と思われます。夏と冬で調整する方向(絞る⇔開く)も変わるのが面白いです。
グラインド
タンピング
 シャワーリングによってグループヘッドの温度を上げ、前回の抽出時に残ったコーヒー豆を洗い流します。ただ、お店で用いていたセミコマーシャルマシンの場合、シャワーリングするほどむしろ温度が下がります(笑)あまりセオリーを鵜呑みにせず、マシンの性状を確認してシャワーリングの時間や有無を選択するとよいです。
 抽出量は30ml、抽出時間はスイッチを押してから25秒前後です。左右の不均一に抽出される原因はいくつかありますが、ポルタフィルターにわずかにつくコーヒーを清掃することで解決したことが多くありました。ポルタフィルターの清掃については、金気がでるので好ましくないという意見と、古いコーヒーが雑味を生むという意見がありますが、僕は湯通しによる簡易な洗い流しでいいように思います。
抽出
■ミルクのフォーミング
≪準備・エスプレッソの抽出・フォーミング≫
 スチーム前に空ぶかしをします。これは、スチームワンド・ノズル内にたまった水を抜くことと、ノズル自体の温度を上げて、安定した状態のスチームを出すためです。ただし、エレクトラの場合はボイラーに直結したようなスチームワンドなので、営業中は水がたまるようなことはなかったです。空ぶかしをしてボイラーの圧力を下げるよりも、そのままスチームした方がいい状態のフォームができていました。ただし、立ち上げ時は水蒸気ではなくてエアがたまっているので、空ぶかしをして水蒸気で内部を満たす必要があります。空ぶかしをしない場合、ボコボコのフォームができます。
 空ぶかしの有無は、マシンや状態に合わせて選択するといいと思います。ちなみに、マルゾッコの空ぶかしをした時にピュっとお湯がでてきたときに驚きました。
 カフェラテは55〜60℃が適温と思われるので、冷めたカップに注ぐと「ぬるい」飲み物になります。そのため、カップウォーマーで70℃程度に温めておく必要があります。提供する直前に熱湯で温めることでもOKです。
準備
ミルク
 カフェラテ一人分(約210ml)を作るために、200mlの冷たいミルクをピッチャーに注ぎます。これをフォーミングし、250mlまで膨らませます。エレクトラのボイラー容量では2杯分のスチームをすると、圧力が下がっていまい、なめらかなフォームを作ることができません。そのため、1杯づつ作る必要があります。
 ノズル先端をミルクに沈め、スチームバルブを開きます。勢いよく回りはじめたら、少しづつ空気を入れます。シュシュシュ・・・というような音がします。この時に必要な空気量は30ml程度ですが、2秒ほどで一気に入れるバリスタもいれば、5秒ほどかけてゆっくり入れるバリスタもいます。いずれにしても、ミルクの膨らみ・音(空気量が大きいと低音・小さい高温)で判断するので、感覚と慣れが必要です。
 所定の空気量が入ったら、スピンをさせます。スピンがきれいにおこると上面の対流が渦状になり、表面の大きな泡が渦の中に吸い込まれるようにして消えていきます。このスピンが表面におこすことができなかった場合や渦のスピードが遅い場合は、表面の大きな泡が最後まで消えず、口当たりの悪いフォームになってしまいます。
 温度はピッチャーに添えた手で測ります。個人差があるので、温度計を準備し、自分の手の感覚とその時の温度の関係を把握しておくと良いと思います。僕がもっともなめらかでおいしいと感じる温度が55℃で、ピッチャーに触れた感じでは「アチッ」という程度でした(笑)。60℃はとても持てません。
ミルクは60℃を超えるとタンパク質が変質して甘みが失われ、フォームも分離して一体感が損なわれるようです。これを確認する実験(?)として、透明なグラスにミルクを注ぎ、後からエスプレッソを注ぐということをしてみてください。フォーミングが失敗した場合や温度が高すぎる場合は、注いだエスプレッソによって、フォームとリキッドの境界がはっきりと見えます。一体感のあるフォームの場合では、境界付近がグラデーションのようになります。フォーム量が多いほど、この傾向は顕著になります。
フォーミング
 フォーミングは難しいので、練習に数百本の牛乳が必要になります。僕は 400本以上は使ったと思います。けれども、重要な練習のためとはいえ、せっかくの牛乳を大量に捨ててしまうのはとても心苦しく、お金の負担も大きくなります。そこで、、練習には水で薄めた「水ミルク」を使うことをお薦めします。水250mlに対して、ミルクをほんの5mlほど入れます。これでフォーミングするのですが、表面に泡が立つだけできちんとしたフォームは作れませんし、もちろん、ラテアートはできません。けれども、きれいなスピンをおこすと、表面の泡は均質でなめれかなものになり、失敗するとボコボコになります。つまり、きれいなスピンをおこすためのノズルの位置やピッチャーの傾きを、この練習で習得することができます。この方法であれば、一本の牛乳を使い切るのに200回くらいのフォーミングの練習ができます。
 次に注ぎの練習ですが、これは大木バリスタから教えてもらった方法で、
水3に対して、ミルク1の水ミルクをつくります。この程度のミルクの濃度があれば、薄めないミルクとほぼ同じような粘性と密度のフォームを作ることができます。これで、ラテアートの練習をします。
フォーミング(練習)
 フォーミングしてすぐに注ぐのであれば、基本的にたたいたり回したりする必要はありません。ただし、大きな泡ができてしまったり、ミルクにこわばりがある場合は応急処理的にたたいたり回したりすることも有効です。「回してフォームを全体的になじませる」ということも言われますが、透明な容器で確認したところ、手で回した程度でフォームがなじむことはないようです。回すことによって、むしろ比重の異なるフォームの分離は進むのですが、フォームに含まれる荒めの泡がつぶれ、なめらかさが増加します。
 
たたき&回し
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ラテアートの描き方
ミルクを浮かばせるには?
 ラテアートを練習していた頃、ミルクがなかなか浮かばなくて苦労しました。カプチーノのような軽いフォームを作ればすぐに浮かびますが、ラテアートに必要なきめの細かい重いフォームはなかなか浮かんでくれません。ようやく体で覚え始めたころ、「そうか」と気が付いたのが下の図です。
 




 
 粘性などの細かいことを考えなければピッチャーからミルクは放物線を描いてエスプレッソに落ちます。ピッチャーの口から離れるほど垂直方向に速度が増しますが、水平方向の速度は変わらないため、液面との角度θが徐々に大きくなります。このθを小さくするほど浮かびやすく、大きくするほど浮かびにくくなります。面白いことにピッチャーの位置が同じなら勢いが強いほどθは小さくなるので、実は浮かびやすくなります。白く、太いラインのラテアートをする場合がこれに当てはまります。
 このコントロールができるようになると、浮かばせる・沈ませるが自在になるので、ミルクが浮かばない内からピッチャーを振ってクレマを壊したり、逆に浮かばせすぎによるリーフ下のミルクだまりを作ることがなくなります。

ポイントは以下の3点のバランスになります。
   @フォームの比重
   A垂直方向の位置(ピッチャーと液面の距離)
   B水平方向の速度(注ぎの勢い)



 
 家庭用グラインダー
左から1回、2回、3回、4回挽き
赤茶色のクレマ
デバイスタイルの
グラインダー